映画史的に重要な映画作家の作品でも、まだ日本では紹介されていなかったり、新たに検証すべきと考えられる作品にスポットを当て特集上映をいたします。いきなり配給がついて劇場公開となることが難しい作品でも、映画を見続けて行く上で、貴重な発見のチャンスを切り拓いていくことも、映画祭の使命として大変重要なことと考えます。この特集上映のセクションは、アジア作品にこだわることなく、世界に触覚を張り巡らせて貴重な映画体験をお届けします。
 今年はフィンランドの"幻の巨匠"ニルキ・タピオヴァーラ監督を特集します。

タピオヴァーラとは・・・
 1911年生まれで1940年に29歳という若さで亡くなった作家で、フィンランド映画史において、最も重要な監督として見なされている人です。1930年代始めから中頃にかけて演劇界に身を置き、その後映画批評と映画団体プロイェクティオに関わる活動を進め、1937年に初監督作品「ユハ」を発表。これはフィンランドの国民的作家であるユハニ・アホによって1911年に書かれた古典的小説を映画化したもので、1998年には日本でもおなじみのアキ・カウリスマキ監督がモノクロ・サイレントで4回目の再映画化をして、「白い花びら」というタイトルで日本でも公開されました。仲むつまじく生活しているユハとマルヤに、ある日シェイメッカというカザノバ風な男がやってくるところから始まるこの作品は、モノクロでありながら、木々の緑が眩しく見えてくるほどで、フィンランドの美しい自然の風景がみずみずしく、この自然の力強さが3人の運命の行方を描く上で、大きな効果を発揮しているのには驚くばかりです。

 続いて1938年には「盗まれた死」と2本の喜劇映画「Two Victors (Two Victors Hen-Pecked Husbands)」と「Mr. Lahtinen Takes French Leave」を発表。1940年「ある男の運命」の撮影中にフィンランドとロシアの間に起こった冬戦争(1939-40)の終戦間際に戦死。「ある男の運命」は出演者の一人、フーゴ・ヒュートネンによって完成されました。現存しているプリントは今回上映する3本のみとされています。「盗まれた死」は「ユハ」とはうって変わったサスペンス調。何かを予兆させるような音楽の中で、室内の光と影に満ちた映像は見物です。そして「ある男の運命」はシッランパーの小説を原作にしながら、出産で妻を亡くした男のたどる運命をフィンランドの階級制度に焦点を当てながら詩的に描いています。

「ユハ」 1937年 / 96分 / モノクロ / 35 mm
上映日時 11月19日(月) 13:00開映(有楽町朝日ホール)
11月22日(木) 19:30開映(浜離宮ホール)

「盗まれた死」 1938年 / 86分 / モノクロ / 35 mm
上映日時 11月20日(火) 10:50開映(有楽町朝日ホール)
11月22日(木) 13:20開映、17:40〜シンポジウムあり(浜離宮ホール)

「ある男の運命」 1940年 / 90分 / モノクロ / 35 mm
  (タピオヴァーラの死後、フーゴ・フュートネンにより完成)
上映日時 11月21日(水) 10:50開映(有楽町朝日ホール)
11月22日(木) 15:30開映(浜離宮ホール)


☆特集上映I ニルキ・タピオヴァーラ
・タピオヴァーラ特集を記念して、内外から3名のゲストをお招きしシンポジウムを開催します。

ペーテル・フォン・バック<映画史家、フィンランド>
ウルリッヒ・グレゴール<第2回東京フィルメックス審査員>
小松弘<映画史家、日本>


11月22日(木)開場17:20/開演17:40 浜離宮ホールにて(「ユハ」上映前)



※諸事情により、変更等ある場合がございますのでご了承ください。